第16章 Freeze! 〈天晶 瑠璃〉
『なんか、拍子抜けだったね』
「俺もびっくりしたよ。何かの罠かと…」
『あれほど真剣勝負のサッカーやってたらそうなるよね』
「それでも、次への切符は掴めたんだ。頑張らないとね」
『次はもう一週間後なんだっけ?』
「そうだよ」
『次こそ気を引き締めていかないと…』
「今日の相手が相手だけにね」
次の対戦相手はまだ出てないけど、明日の内には出るらしい。
「それじゃあ、寄り道して行こうか」
『ええ?何処に?』
「高校生が良く行くような所」
いきなり手を引っ張られて連れて来られたのは、駅前のタピオカのお店。確かに、高校生良く行くけど…。
「意外だった?」
『うん。ヒロト君こういう所あんまり行かなさそうだなって』
「実際行った事ないしね。こういう所って男子一人で行くの嫌だからさ」
『それに彼女を使うと』
「奢るから許して」
『許す』
別にタピオカに唆られた訳ではない。断じて。
「何が良い?」
『黒糖が良いかな』
「わかった」
少し待ってるとカウンターから、タピオカドリンクが渡されてきて、口をつける。
「そっちの少しちょーだい」
『良いよ』
何の気もなくはい、と渡した後に後悔した。これ、関節キスなのでは?
「遅いよ」
ヒロト君はドリンクを口に含んでそのままキスしてきた。
『んん〜!』
「ご馳走さま」
いつも、こういう時はヒロト君が一枚上手。してやられた感が否めない。
『も〜!』
「瑠璃はいつも危機感ないから」
『あ、あるよ!ちゃんとあるもん!』
「ないから俺が心配になるんだよ。さっきだって何も考えないで渡したでしょ?他の男の子だったらどうするの?」
『あれはヒロト君だったからで…』
他の男の子だったらまずそれちょーだいとか言ってこないし!
『だ、大丈夫だから!本当に!他の男の子とは多分出かけないから!』
「そうだと良いんだけど」
『心配性だなぁ』
仕方ないから、これで安心してもらおう。今日の試合勝ったご褒美にでもあげようかな。残ったドリンクをちゅーっと飲んでそのままヒロト君にキスした。
「んっ⁉︎」
『こういう事するの、ヒロト君しかいないもん』
「分かったよ。そろそろ帰ろうか。遅くなるし」
『うん』
いつもの三人でならタピオカも飲んだことあったけど、彼氏と来るとまた違うな。ヒロト君、もしかして最初から関節キスか口移し狙ってたんじゃ…?