第15章 Dream! 〈綾織 星羅〉
『そっか。お父さんとお母さんは?』
「まだ和解してないの。家はまだ売られてないけど」
『大丈夫なの?』
「何かあったら頼りなさいって豪炎寺のお父さんに言われちゃった。何気優しいの。豪炎寺のお父さん」
『良かったね』
「うん」
『そうだ、試合終わるまでもう少しあるし、飲み物皆の買って来ようよ。運動して喉乾いたと思うし』
「だね。行ってこようか。瑠璃ー!基山君!荷物お願い!」
「はーい!」
四月にあったあの事件から、嘘みたいに平和になった。と言っても全て解決したわけじゃないんだけど。でも、こうして皆で笑える事が何より嬉しいから。
『有人君はお茶で良いかな』
「星羅もお茶にする?」
『うん。乃愛ちゃんは?』
「私水にするよ。豪炎寺はお茶にしとこ」
『瑠璃ちゃん達は?』
「あの二人は水で良いんじゃない?瑠璃いつもペットボトル買う時水だし」
『そうしよっか』
自販機でピッピとボタンを押していく。今は大体午後二時。一番日差しが降り注ぐ頃。
「いやーそれにしても暑くない?」
『ほんとだね。夏だから、日差しが強いし暑いし』
「日焼け止め塗り直さないと。あ、そうだ」
乃愛ちゃんが耳打ちしてきた。その内容は衝撃の内容で。水着までは何とかハードルを越えられたけど、そこまでは…。
『ええ?む、無理だよ…!』
「いや、大丈夫!これで、距離縮まるって!」
『うええ…?』
「背中、焼けていいの?」
『そ、それは嫌だ…』
「よし、行ってこい!」
皆に飲み物を渡して有人君の所に戻った。隣で話しながら日焼け止めを自然に塗る事にした。にしても、こんなに上手くいくものなのかな…。
「どうかしたのか?」
『あ、うん、背中に届かなくって…。塗ってくれないかな…?』
「他の二人はどうした?」
『二人ともお楽しみだから…』
「…」
有人君凄く悩んでる。というか石化してるから、考えてるのか、ただ単に思考停止してるだけなのか…。あれ、そういえば乃愛ちゃん
「多分鬼道君凄く悩むと思うからさ、そういう時はゴリ押しだよ!」
って言ってた様な…。ゴリ押しってったって何すれば…。いや、もうこれしかない…!
『ど、どうしても…ダメ?』
「わ、分かった」
と、通った!ゴリ押しで通った!けど、緊張する…!めっちゃ心臓ドクドク鳴ってる…!
「塗るぞ」
『う、うん』
塗りやすい様にポニーテールを持ち上げた。