第1章 始まりは突然に・・〈一松〉
『本当に、ありがとう。』
「いいって、別に、」
そのあとほどなくして警察がきて、このゴミ以下の野郎を警察に差出して一件落着。
・・・と言いたいところだが、花子は恐怖からか身体をカタカタと震わせ、それを抑えるかのようにそわそわと部屋中をウロウロとしている。
『あっ、一松くん、お茶かなんか飲む?』
「いや、いらない。」
『うん、だよね・・・。』
「うん・・・。」
『・・・・・。』
「・・・・・。」
・・・気まずい、なにこの空気。ムリ、耐えらんない。うんこしたい。
リビングで2人で立ったまま、沈黙が流れる。てか、マンションだもんな、部屋くっそ広いな。
チラっと横目で花子を見るとなんだか、うるっとした瞳にカタカタと震えた身体。
・・・あれ?なんだか、ムラっとする。
これは、あれだ。おれが童貞だからだ。
花子とはたまに路地裏でネコたちに餌をあげる、そういう関係でいいんだ。あわよくばとは思うけど、別にそれ以上なんて期待してない。
ここにいたら、変な気を起こしそうだ。
「・・・帰る。」
『え、なんで?』
は?逆になんでだよ。おれの気も知らないで、本当にアホだ。こいつは。救いようのないアホだ。
黙りこくるおれに花子はプルプルと身体を震わせながら懇願するのだった。
『一人にしないで、』
隣にいて、と。