第5章 シコ松のシコ〈チョロ松〉
『はぁっ・・・・・はぁっ・・・・・はぁっ・・っ、』
花子ちゃんは頬を赤らめ、肩で息をしながらひたすらに眠り続けていた。
ドライモンスターことトド松は女の子からの誘いに二つ返事で家を出て行った。
「やっぱりおれ面接日変えてもらって看病手伝おうか?」
「何言ってんの、一松。ここは僕一人でなんとかするから、花子ちゃんがくれたチャンス無駄にしちゃダメだよ。分かったらさっさっと行った行った」
そして一松もまた、後ろ髪を引かれながら家を出て行った。
そして冒頭に戻る。
残った僕はというときちんと二人の看病をしていた。バカな兄弟たちとは違ってやっぱり一番まともなのは僕。燃やしたり、調教したり、分裂したりなどしない。
・・・偉いなぁ、流石チョロ松だよぉ。
花子ちゃんのおでこのタオルを冷やしてあったものと取り替える。
少し汗ばんだおでこ、火照った顔に、上がった息。
・・・ん?これなんだか、エロくない?
馬鹿ばかバカっ!
病人相手にナニ想像してるんだっ!
咄嗟に花子ちゃんに背を向け、一人悶々と湧き上がったふしだらな感情に蓋をする。
せっかく蓋をしたというのにどうにも気になってしまい、もう一度振り向き花子ちゃんを盗み見る。半開きの口さえもいやらしく見えてしまうほど、僕の頭の中はピンク色に艶めいていた。
・・・これ、クソ長男の言葉を借りるなら、チェリーハラスメントだよね?そうだよね?
うわあぁぁぁぁぁぁっ!!
叫びたい衝動に駆られながらも必死に口元を手で覆い地団駄する。
「“寝込み襲うとか最低だよ”」
天使のチョロ松が僕に囁く。
そうだ、その通りだ。加えて彼女は高熱でうなされているんだ。襲うなんて以ての外だ。
「“童貞卒業の絶好のチャンスじゃないか。さっき一松にチャンスを無駄にするなって言ってたのはどこのどいつだ?”」
悪魔のチョロ松も負けじと僕に囁く。
そうだ、チャンスを無駄にするなんてあっちゃならない。こんなチャンスを無下にするなんて以ての外だ。
「“おいチョロ松、どうするんだよ?”」
チョロ松のチョロ松も何か僕に言いたそうに熱帯びる。びっくりするくらい硬くなったソレを感じ、僕はゴクリと生唾を飲んだ。