第4章 失恋バナナ〈十四松〉
そんなあつしくんから思いを告げられたのは引っ越してから3ヶ月ほど経った頃だった。
もちろん答えはノー。
目を閉じて思い浮かぶのは一松くんの姿ばかりで、到底他の誰かを好きになんてなれなかったのだ。
中にはいつまでも叶わぬ恋を忘れられない私を小馬鹿にする友達もいた。
それでもあつしくんは違った。
交際を断ったあとも変わらず優しく、時には一松くんがどんな人なのか聞いてくる日さえあった。
そういう毎日が半年、1年、3年と過ぎていき、いつしか私は一松くんのことを思い出す日が少なくなっていた。
「ねぇ、やっぱり付き合ってみないか?」
あつしくんからの2回目の告白で、とうとう私たちは付き合うことになった。そしてその日の夜、コトに及んだのだ。
それが初めてだった私は、あつしくんにされるがまま快楽に身を委ねることしか出来なかった。
甘いキスはおでこ、頬、耳、口、それから首と降り注ぎ、丁寧かつ優しい愛撫に私の中は一瞬であつしくんでいっぱいになった。
だから、ほんの少し。
十四松くんの気持ちが分かる気がした。
あつしくんに救われたように、今度は私が十四松くんを救ってあげるんだ。
そんな使命感から十四松くんの切なく熱持つ欲望に手を触れた。