第4章 失恋バナナ〈十四松〉
クチュクチュ・・・
少し寒い暗闇の玄関でどちらともなく重ねた唇からはいやらしい音が漏れていた。
十四松くんの男らしい舌が、唇を割って何かを探すようにぐるぐると口内をかき乱した。
目当てのそれを見つけると、十四松くんの絡みつくような深いキスに、思わず息をするのも忘れてしまう。
『・・・・・・んっ・・・っ・・・んん、』
だんだんに苦しくなり酸素を求め顔を離すと、すかさず十四松くんの左手により顎をクイっと持ち上げられる。
「だーめ。・・・もっと、」
『・・・やっ・・・・ぁっ・・・・・』
いつもと違う、強引で男らしい十四松くんにドキリと胸が跳ねる。
私の知ってる明るくてどこか幼さ残る少年のような十四松くんは、もうそこにはいなかった。
そして切なげに私を求める彼に、いつの間にか昔の自分を重ねていた。
あれは、アメリカに行ってすぐのことだった。
聞き慣れない英語ばかりが飛び交う毎日で、最初のころはみんなが何を話しているのか分からず、学校の授業も全くもってついて行けなかった。
しかし幸いなことに同じクラスには、日本人の男の子あつしくんがいた。
彼はお父さんが社長で、産まれた頃からずっとアメリカで暮らしていたらしく英語もペラペラであった。
日本語と英語を話せる彼は、まさに私の救世主であり、放課後は毎日のように授業の内容や英会話など様々なことを優しく教えてくれた。
ときどき街中を案内してくれたり、お友達を紹介してくれたり。彼のおかげで私はなんとかアメリカで生活する術を手に入れていた。