第4章 失恋バナナ〈十四松〉
「それなのにっ、・・・ぼくっ・・・ぼくっ、」
十四松くんは堰を切ったように、大粒の涙を流し肩を震わせながら話す。
「・・・ぜんっぜん、幸せじゃないんだっ。寂しくって寂しくって、仕方ないんだっ。」
『・・・そっか。辛いね、十四松くん。』
泣きじゃくる十四松くんに、私は背中をさすってあげることしか出来なかった。
どれくらいそうしていただろうか。
急に背中に軽い痛みが走った。
『・・・へ? ・・・十四松くん?』
気が付くと私の肩をガッチリ掴んだ十四松くんが私を壁に押し付けていた。
・・・痛い。
十四松くんは俯いていて表情が見えないが、肩にある手が小刻みに震えていることは分かった。
「・・・花子ちゃんっ、・・・ご、ごめんっ、」
『・・・・・っ!!』
大きな声で謝ると十四松くんは、その瞬間触れるだけのキスをしてきた。突然のこと過ぎて目を見開いたまま呆然と立ちすくむ私に、さっきまで泣いていたはずの十四松くんは悲しそうに笑った。
『十四松・・・くん?』
「花子ちゃん。・・・慰めて、・・・くれる?」
熱い視線が交わる。
私は何も言わなかった。いいよ、とも、いやだ、とも。ただ肩に置かれた震えた手をそっと握り返した。