第2章 思ひ出ほろりん〈カラー松〉
「一松、良いの?行かなくて。」
「・・・別に。」
チョロ松兄さんが不安そうにおれに問いかける。
「花子ちゃん待ってるんじゃない?もう7時だし外暗くなるよ?」
「いいって。」
トド松も続けておれに語りかける。それでもおれは聞く耳を持たなかった。
カラ松が家を出て2時間。
今頃花子と会っているのだろうか?
正直に言えば、花子のことは好きだ。付き合いたい、とも思う。
手を繋いだり、キスしたり、デートしたり。
いやらしいことだってしたい。
じゃあ、今公園に行くべきなのだろうか?
でも行ってどうなる?想いを伝えて付き合ったとして、花子はここ赤塚に残ってくれるのか?
いいや、残らない。
彼女は明日、アメリカへ発つんだ。そしてもう二度と会うこともない。
だとしたらバカみたいに想いを伝えたって結局離れ離れ。もう全て意味のないことなんだ。
そう思っているのに、そう思っていたのに・・・。
「泣くくらいなら、行けよ。一松。」
おそ松兄さんに言われて頬に手を当てると、いつの間にか涙が零れていた。
おれは勢い良く家を飛び出した。全速力で走ってアカツカ公園を目指した。足に違和感を感じ足元を見ると、間違えてトド松の靴を履いてきてしまっていた。
が、今はそんなことどうでもいい。ただひたすらに走り抜いた。
目的地に着くと、やはりそこにはカラ松と花子がいた。
ちゃんと花子に謝って、話をしよう。そう思い2人に近付こうとしたときだった。
「・・・ウソ、だろっ・・・、」
おれは見てしまったのだ。
カラ松が花子にキスしているところを。