第2章 思ひ出ほろりん〈カラー松〉
「一松、オマエ何してるんだ?」
「何って・・・、マンガ読んでんだけど、」
家に帰ってきて、寝転びながらマンガを読んでいると学校から帰ってきたカラ松がおれに声をかけてきた。
部屋には他の兄弟もみんないて、それぞれが好きなことをして過ごしていた。
「いや、そうじゃなくてさ、」
「なに?」
歯切れの悪そうな話方をするカラ松に少しイライラしながら、それでもマンガを読んでいると重たそうに口を開いた。
「アカツカ公園行かなくていいの?」
そのとき、おれはハっとした。
心臓がやけに強く打ちつけてるようなそんな感覚に陥ったが、それでもそのことに気付かないフリをした。
・・・あの時テンパっていて気にかける余裕もなかったが、教室にカラ松も残っていたのだろうか?
「別に、行くって言ってないし。おれ。」
「でも花子はまだ」
「知らねぇよ。アイツのことなんて。」
カラ松がまだ話切らないうちに、食い気味に自分の感情をぶつけた。不思議なことに思ってもみない言葉たちは、堰を切ったようにおれの口からベラベラと出ていく。
読んでいたマンガを閉じて、起きあがりカラ松の方へ身体を向き直す。
「あれ?カラ松のくせに心配してんの?」
「いや、オレはただ」
「だったらカラ松が行けよ。」
「それじゃ意味が」
「どうせおれたち同じ顔してるんだし、誰が行ったって同じだろ?」
そこで、おれの左頬には鈍い音と共に激しい痛みが襲ってきた。
・・・殴られた?カラ松に?おれが?
「・・・っ、ふざけんじゃねーよっ!」
次の瞬間、カラ松のドスの効いた叫びにも似たような声と共におれは胸ぐらを掴まれた。
流石にただ事じゃない雰囲気に他の兄弟たちも慌て出し、おそ松兄さんが止めに入る。
「オマエらどうしたんだよ?」
チョロ松兄さんがカラ松を、十四松がおれを抑え間におそ松兄さんとトド松が入る。
「・・・一松、オマエにはガッカリした。」
それだけ言い放つとカラ松は、乱暴にチョロ松兄さんの腕を払い除け、家を飛び出した。