第2章 思ひ出ほろりん〈カラー松〉
それは中学3年の夏、花子がアメリカに引越す前の日のことだった。
おれとカラ松と花子は3年間同じクラスだった。カラ松が花子のことをどう思ってるかなんて直接聞いたことはなかったが、きっとおれと同様に好意を抱いていた。
その日、花子は帰り際、アカツカ公園に来て欲しいと顔を赤くしながらおれに伝えた。そのときの花子の表情を今でもちゃんと覚えている。
中学生。
それはすごく多感な時期で、そんな話を聞いていたクラスの男子がすぐに茶化しだしたのだ。
「お、山田、一松に告白か〜?」
「一松どうなんだよ、モテる男は大変だね〜!」
「ヒューヒュー、熱いね、熱いね。」
今思えばそんなのなんてことない男子たちの戯言なのに、あの時のおれはそれがすごく恥ずかしくて素直になれなかった。
だから思ってもない、酷い言葉を花子に浴びせてしまったんだ。
「うっせーよ、ブス。」
『・・・っ、』
「アカツカ公園になんて行くかよっ」
感情任せに吐いた言葉は、きっと花子の胸にズカズカと刺さったことだろう。そのときの花子の顔はとてもじゃないが、見られなかった。