【うたプリ】My only prince.【R18】
第8章 大人が勇気を仕舞う時には〘嶺二〙
ピンポーン
心臓がドクッと跳ねた。自然に上がる口角。
『おかえりなさい!』
興奮を心の中の150分の1に抑えて愛しい人を迎えた。
「ただいま。天音ちゃん。」
最後に会った時よりも少し伸びた髪が頬に触れて、全身が彼の温かさに包まれた。
「ふぅ〜、生き返っちゃうな。」
『嶺二さん、とりあえずお着替えを…』
「やーだ。」
勢いよく唇と唇が重なって、冷たい手が私の頭を引き寄せるように撫でた。腕を少し引っ張ると、嶺二さんの方から手を繋いでくれた。やっぱり少し冷たい。
『連絡してくれたら駅まで迎えに行ったのに、こんなに冷たくなってますよ。』
「女の子をひとり夜道で歩かせるわけにはいかないからね。それに、天音ちゃんだって帰ってきたばっかでしょ?」
『あ…はい。』
私はここで自分がスーツ姿のままであることを思い出した。
「着替えよっか。」
『はい。』
私たちは着替えてからお湯を沸かして、温かいお茶を飲みながらテレビをつけた。
ソファの上で二人並んでテレビを見ていると、私ではない手が私の髪をスッと梳いて耳にかけた。隣を見るとなんとも色っぽい目をした恋人がいたから、思わず見つめ返してしまう。
「天音ちゃん、」
相手の顔が近づいてきて、優しいキスをした。雪みたいにふわっとしていて、それからまた見つめ合った。
「本当はもう我慢出来ないんだ。」
『私もです。』
抱きかかえられるようにして押し倒されると、今度はさっきよりも長く口付けられた。
見つめられる瞳に吸い込まれそうになる。