【うたプリ】My only prince.【R18】
第8章 大人が勇気を仕舞う時には〘嶺二〙
「ねえちょっと、嶺ちゃん以外に何か考えてるでしょ?…って言いたいところだけど、そうじゃないんだよね。」
頭がはてなマークで埋め尽くされる。
そんなことないのに。私だって嶺二さんに触れたくて仕方なくて、ずっと我慢してたのに。こんなすぐに触れ合える距離に嶺二さんがいるなんてそれだけで幸せ。
ふと、しばらく幸せを感じずにいたい、なんてさっきまで思っていたことを思い出した。極端な落ち込み方なのは分かっているが、今日は本当に辛かったのだ。そう、私はすごく落ち込んでいて、それが私の恋人が気づかないわけが無かった。私の恋人は、他の誰でもない嶺二さんなのだから。
『嶺二さん、』
「僕のこと、見れない?」
『見てます…』
「そうじゃなくて。」
嶺二さんは私のことをぎゅっと抱きしめた。
「君が望むなら、このまま朝まで眠ったって構わないよ。それだけで幸せだよ。」
そうじゃなくて、という言葉が出てこなかった。気づいたら私は体温よりも熱い涙で嶺二さんの肩を濡らしていた。
『私の気持ちのせいで…ごめんなさい、涙が、止まらなくてっ、…』
「うんうん。そんな日もあるよね。わかるわかる。」
ぽんぽんと背中をさする手が、本当に優しい。
「強く君に触れようとしなくても、こうして抱きしめているだけで、会えなかった時間がもう取り返せちゃったみたいだ。…だから今夜は、このままでいさせて。」
fin.