第4章 つもりに積もったチリは、華となるか、凶器となるか。
「や、やめぇ━━っ、翔琉、やだ」
「辛いんじゃない?これ。今日何回咬まれたっけ」
「ぃ、っぁあん……っ」
『あのあと』。
そう。
あのあと。
あの時翔琉が来なかったらあたしはたぶん確実に死んでた。
身体中の血液全部、飲み干されて。
体温が奪われて。
感覚がなくなって。
視界も朧気になっていく。
指先ひとつ、動かせなくて。
ああ、あたし、死ぬんだ。
あの時確かにあたし、それを覚悟した。
『凛っ!!』
そう呼ぶ、翔琉の声を聞くまでは。
それから気付いたら、自分の家で。
自分のしでかした事の重大さに気付いたのは数秒後。
殺される。
素直にそう思い、青ざめながら頭に浮かんだのはたったひとり。
怒りにまみれてる時ほど笑顔が怖い、たぶんあたしの恋人って定義であってるはずの人物だ。
もちろん学校をサボることも考えたけど、家でひとりでいても翔琉なら絶対上がり込んでくるし。
なら大勢いる学校の方が安全。
………なんて考えたあたしの思考回路幼稚すぎ。
大学着くなり捕獲されちゃうし。
挙げ句咬まれて意識なくなるし。
それを二度三度、繰り返されれば嫌でも気付く。
『わざと』、だ。
咬まれていくら気を失っても、媚薬のようなあの感覚は残る。
残るどころか、それは蓄積されて。
大学とゆー公衆の面前な手前、それは耐えるしかなく。
咬まれた牙から流し込まれた血液とか唾液とか。
濃度の違う翔琉の体液は、いつまでも色濃くあたしの中へと入ってくるのだ。
「やだ、ぃああ……っ」
下着越しに割れ目を何度か往復するだけで簡単に濡れる体。
勝手に上がる息遣い。
「イっちゃいそう?限界?」
爪先でカリカリと引っ掻くように擦られれば。
仰け反り弓なりに体を反らし溢れる蜜。
「ん……っ」
裾から難なく侵入した掌は、迷いなく膨らみへと伸ばされ、形を変えるように揉みしだく。
「翔琉……っ」
キスをねだるように自分から顔を寄せれば。
「駄目。あげない」
唇に触れたのは、翔琉の掌。
「まだこのまま我慢して?言ったでしょ?俺怒ってるんだよね」