第4章 つもりに積もったチリは、華となるか、凶器となるか。
「翔琉」
「………」
嫌な時現れるよな、ほんと。
苛立ち増強剤じゃん。
「咲」
「毎回毎回人が声かける度に嫌な顔しやがって」
「嫌な時に現れるお前が悪い」
「頭ん中ぐちゃぐちゃだぞお前。ただ漏れ」
「読むなよ勝手に」
「読んでない。勝手に入ってきた。ブロックすんの忘れたのか?動揺しすぎ」
「………」
そっちこそ人の思考入って来ないようブロック出来たはずじゃ……。
容易く受け入れてんじゃねーよ。
「………未琴さんの、匂い」
「今まで一緒だったからな」
なんでもないようにさらりと言ってのける目の前のお目付け役を、一睨み。
仮にもお前、今教師やってなかったか?
生徒と寝るなよ、まじで。
「何」
「凛ちゃんに勘ぐられないよう注意しろよな。お前が仲間だって凛にはバレたんだから」
「仲間ですか」
「余計なこと言うな」
「善処はする。未琴の血、日を追う毎に美味くなるから。手放すには惜しいし。女の恋する気持ちはすげーな」
「刺されろよ、一回」
「まぁ、それで気が済むなら何度でも」
「…………」
「ストーカーしてまでひとりに執着する気持ちもわからなくもないしな。ああ甘いと逃がしたくはねーし」
「一緒にすんなよ」
「………凛、いないけど」
「は?」
バカ咲なんて相手にするんじゃなかった。
おかげで気が逸れた。
凛が店を出たのも気付かないなんて。
「近いな」
嫌そうな咲の表情。
凛の血液は、凶器のように食欲をそそる。
夢中で血液全部、飲み干したくなるほどの。
当たり前だ。
俺が、毎回毎回愛して、血を与えて。
最高の至福を与えてるんだから。
吸血鬼なら、誰だって━━━━。
「凛っ!!」
店からさほど遠くない、駐車場。
の、店から死角の一本道。
薄暗い小さな小道で、見つけた凛は。
首筋に鋭利な牙をまさに今、突き刺されている、ところで。
瞳に宿っていた明るくキレイな色が。
冷たく凍るように失われているところだった。