第4章 つもりに積もったチリは、華となるか、凶器となるか。
「そんなの、許さないんだから……っ」
「うん」
流れる涙を、唇を寄せて舐めとる。
「凛」
ああ。
やっぱり。
好きだなぁ。
この子はなんでほんと。
こんなにも。
「………かわいいのかなぁ」
ちゅ、ちゅ。
て。
溢れる涙を舐めとっていく。
「怖がらせて、ごめんね?」
「ほんとよ……っ、昨日の翔琉、ほんと怖かったんだから」
「だって凛が隠し事するんだもん」
「そんなの、言っちゃったらサプライズにならないじゃないっ」
「そんなに驚いて欲しかった?」
「欲しかった!」
「………あんなに昨日、酷いことされても言わなかったのに、なんで言う気になったの?」
「な、なんで、って……」
「ねぇ、なんで?」
「…………っ、ん!?」
言葉につまる凛の唇に噛みつくように自分のそれを重ねて。
勢いのままにベッドへと押し倒した。
「凛ちゃん」
両手首は捕まえたまま。
真っ赤になる凛の顔を、今度は真上から見下ろした。
「……翔琉、が、本気で怒ってたから」
「怒ってたから?」
「送ってく、なんて、はじめて言われた、し。」
「そうだっけ?」
「帰るって言ってもいつも帰してくれないじゃんっ」
「そうだっけ?」
「昨日みたいに、感情ぶつけてくれた方がまだいいよ!視線反らされるのは、嫌だ。」
「…そうだね、ごめん」
「顔がごめん、て顔してない」
「だって嬉しいから」
誕生日プレゼント。
別にそんなもの、凛がいてくれればなんにもいらない。
本気で思ってる。
欲しいのがあるなら全部あげるし、いくらだって甘やかしたい。
だけどこの子の望みはそんなものじゃない。
わかってた。
凛はいつも、対等でいることを望むんだ。
もちろん隠し事してたことは許すつもりはないけど。
『俺のため』。
その事実だけで、綻ぶ顔を隠せなくなるほどには。
凛に夢中なんだ。
好き。
つもりに積もったこの気持ちは。
華か。
それとも凶器か。
今はまだ、わからないまま。
【完】