第4章 つもりに積もったチリは、華となるか、凶器となるか。
確かに。
翔琉からの連絡スルーした。
着信にも、気付かないフリ、した。
でも。
メールにはただ単にほんとに気付かなかっただけで。
着信取らなかったのは、バレたら困るって思ったから。
翔琉恐ろしく耳、いいし。
男の人といるのバレたらきっとヤバいんだ、って、思ったから。
ほんとに。
ほんとにあんなことになるなんて全然思わなかったんだよ。
翔琉から逃げようなんて思ったことないし。
翔琉以外の人と付き合うなんて想像すら出来ない。
『先輩』、だから。
あと一週間だけ。
あと一週間だけは仲良くしなきゃいけないから。
『男の人』としてじゃなくて、『先輩』として見てたから。
気を悪くしないように。
気分を害さないように。
ただそれだけだったんだよ。
「…………嘘……」
目覚めたところは学校から翔琉の家へと変わっていて。
しかも場所はいつもの校舎裏からご丁寧にベッドの上へと変化している。
ただし。
視界は真っ暗だし。
手は頭の上から動かない。
「起きた?」
「翔琉……っ」
「うん。ここはどこだか、わかる?」
「翔琉の、部屋」
「正解。良くわかるね?」
「翔琉の、匂いがするもん」
「そっかぁ」
『いいこ』、そう言って。
額にキスが落とされて。
そのまま掌は、髪を解くように頭を撫でる。
「で?なんでバイトなんかしてるの?欲しいのあるなら言えば買ってあげるのに」
「それじゃ、駄目なの!」
「なんで?」
「いつも翔琉に貰ってばっかじゃ、やだ」
「そんな意地のせいでこんなことになってるのに?」
「それでも!」
バイトは、必要なの。
「だから、なんでバイトなんかしてるの?」
「欲しいものが、あるから」
「何が欲しいの?」
「………」
「凛ちゃん」
「……っ、ひ、っぁ」
指先が、体をなぞる。
それだけでビクン、て、体が跳ねた。
「こんなんで感じた?凛の血の匂い、甘くなった」
「………っ」
「何が欲しいの?」
「………言えない」
「━━━━━そっか」
「……やっ!?ん、っぁん、やだぁ……っ」