第4章 つもりに積もったチリは、華となるか、凶器となるか。
怖い。
怖い。
目がマジだってば。
紅い目の翔琉さん、半端ないって。
怖すぎるよ絶対。
絶対マジだ。
『監禁』、とかだって。
絶対やりかねないから。
怖すぎるよマジで。
あたしなんでこんなめちゃめちゃ怖い人と付き合ってんだろ。
考え直すべき?
「凛ちゃん」
恐怖で力の抜けたあたしに合わせてしゃがみながら。
翔琉はにっこりとあたしを覗き込む。
「何?バイトって」
「………」
「凛ちゃん」
「………バイト、の、先輩」
「うん。で?」
「昨日、は、バイト終わった後、ご飯、誘われて」
「オッケーしたんだ?」
「だって、みんないると思ったし、先輩、だし」
「でもオッケーしたんだ?」
「………」
………笑顔で脅迫、未琴の言ったとーり怖いわ、これ。
目が、めっちゃ笑ってない。
「ふたりきりってわかった次点で帰ろうと思わなかったの?」
「だから、先輩だし」
「先輩になら襲われてもいーんだ?先輩って何しても許されるわけだ?」
「違う、けど」
「じゃぁ何?」
「……翔琉、怖い」
「怒ってるもん」
さっきからにっこり笑顔で?
怒ってるなら、怒ってる風にしてくんないかな。
言葉とか、態度とか。
「………泣いても駄目。今日は許してあげない」
許してもらえたことなんて、ありましたっけ。
「咬んであげた方がいい?気持ち良くなればハイになって全部正直に答えてくれる?」
座り込んだあたしの右足に、翔琉の舌が、這う。
「凛ちゃん」
ゾクリ。
紅い目が、まっすぐ射抜く。
背筋が、凍る。
「━━━━っ」
「ほんと、強情だよね凛」
右の大腿に、ズキンと走った痛み。
『また』、だ。
また意識が、なくなる。
今日これ、何度目だっけ。