第4章 つもりに積もったチリは、華となるか、凶器となるか。
「━━━で?凛ちゃん」
「は、はい」
「ご丁寧にこんな『痕』までつけられちゃってさ、何されたの?」
「し、ってるじゃん、翔琉さん」
「うん。でも凛の口から聞きたいの」
「そ、そんなの………」
「言えないの?」
首へと這わせた唇は、肩のところへたどり着き、容易に下着の肩紐をずらす。
現れたのは息を飲むほどに美味しそうな、真っ白な首筋。
ただひとつむかつく痕を、除いては。
「凛、そろそろ本気で怒るよ?」
「も、怒ってるじゃん」
「冷静でなくなるよ?」
ああ、甘やかしすぎたかな。
優しくしすぎたかな。
「ねぇ凛ちゃん?凛を監禁して、俺以外の誰にも会わせないようにすることだって簡単なんだよ?毎日毎日血を飲んで、快楽に溺れて、俺以外必要なくなるくらいに凛を壊すことだってできるよ?」
足枷つけて。
衣食住も管理して。
逃がさない。
俺に溺れるまで何度だって繰り返すから。
「━━━━━ッッ」
さすがに怯えたように顔色を替えて。
それでも精一杯の虚勢で、凛は俺を煽る。
「じ、冗談に、聞こえないんだけど」
声が震えてるよ?
冗談じゃないことくらい、キミが一番わかってるはずだよ。
ねぇ、凛?
「試してみる?」
「ぇ」
「冗談かどうか、試してみる?」
「…………っ」
美味しそうな首筋めがけて牙を突き刺そうと息を飲んだ、瞬間。
「バイト!!」
上から降ってきたのはそんな単語、で。
呆気にとられて力の抜けた、その隙に、凛の身体はずるずると壁伝いに崩れ落ちて行った。