第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
「凛っ」
「……あ、れ」
「はぁー、良かった、凛大丈夫?痛いとこない?」
「………ない、みたい」
「良かった……」
あたしをその腕に囲ったまま、翔琉が脱力するように深く息を吐いた。
「凛ちゃん階段から落ちたんだよ、だから駄目だって行ったのに」
「………だけどあたし、平気だよ?」
階段から落ちた、わりに。
痛いどころかなんともない。
「……ったく、たりめーだろバカ。落ちたのは翔琉だっての、お前は翔琉の上に落ちただけだろーが」
「!?」
ぇ?
あれ?
なんで?
なんで咲ちゃん先生?
「黙れよお前、凛がびっくりするだろ」
「??」
はてなを頭にいくつも浮かべながら咲ちゃん先生を、見れば。
その腕には未琴がぐったりと項垂れていて。
軽々と咲ちゃん先生が抱き抱えていた。
「未琴っ!!」
思わず翔琉の腕の中から飛び起きて、未琴へと駆け寄る。
「凛ちゃん、走っちゃ駄目だってば」
「心配ない。記憶は全部消したから」
「ぇ」
「辻褄が合うように言い訳でも考えとけ」
それだけ無愛想に言い放って、先生はスタスタと階段を上がって行った。
「大丈夫だよ、未琴さんを部屋で寝かせるだけだから」
「………」
「凛?やっぱりどっかぶつけた?痛いことある?」
「ないよ」
すごく心配そうにあたしの掌を握って。
翔琉がおろおろとあたしを覗き込む。
「ないよ、どこも痛くない。翔琉が庇ってくれたんでしょう?翔琉は怪我、してないの?」
「俺は大丈夫、治るから」
「……そっか」
「凛ちゃん?」
「翔琉」
「なに?」
両掌は、翔琉のそれに握られたまま。
翔琉はにっこりと人懐っこい笑顔をあたしに向けた。
「……『あの人』も、仲間なの?」