第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
『っく、ひ、っ、ぅぅ』
『なぜ泣く?』
『こわいこと、ゆーんだもん』
『お前からは甘い匂いがプンプンするのも事実だ。教えてやったんだろう?悪いやつらには気を付けろと』
『それが、こわいってゆーの!!』
『?わからんな』
『だってそれ』
『?』
『牙、でしょう?』
『そうだ』
『きのうみたテレビで、やってたもん。女の人食べちゃうんでしょ?』
『食べないよ、飲むだけだ』
『の、む?』
『咬むだけだ』
『………わ、あああんっ、やっぱり凛、ころされちゃうんだー』
『なんでそーなる』
『だってこわいもん』
『守ってやる』
『?』
『守ってやる、お前を。きっと探しだして、絶対守ってやる。誰にも殺させない』
『………ほんと?』
『俺は約束は守る男だ』
『………6歳の子供でしょ?』
『年は、関係ないっ』
『……ふふ』
『なんだ』
『おもしろくて、あなたおもしろい』
『笑っていろ』
『?』
『お前は笑った顔が似合う』
『!!』
『なんだ』
『レディにそんなこと、いわないのよっ』
『6歳の子供だろう?』
『………ぅ、ぁ』
『凛。必ず探しだして迎えに行く。決めたぞ、俺はお前と結婚する』
『待って、どこいくの』
『心配するな。ここで待っていろ、両親がまもなく迎えにくるぞ』
『え?待って、行っちゃうの?あなた名前は?名前、おしえて』
『翔琉』
『かけ、る?』
『覚えておけ』
そのあと花びらがまって。
男の子は、いなくなっていた。
ついでにそのあとすぐに、両親が探しに来てくれたんだっけ。
これは、記憶?
あたしの、記憶。
ああそっか。
記憶だ。
なんで忘れていたんだろう。
こんな、大事なこと。
翔琉。
会いたいな。
会ってちゃんと、話したい。
ねぇ翔琉。
会いたいよ。