第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
「かけ、る?」
下に翔琉の着てたラッシュガードを敷いてくれたとは言うものの、やっぱり岩場は冷たい。
しかも洞窟の中だし。
ドロドロに溶かされて熱の籠る体には、ちょうどいい冷たさだけど。
「ねぇ、凛」
なかなか戻らない瞳の色に不安になってる、そんな時に。
すっごく艶のある声でふいに名前呼ばれて。
しかもそれが大好きな彼氏で。
だけどなんだか知らないうちに変なスイッチ入っちゃってる、彼氏、で。
そんな彼氏の真っ赤な瞳が意地悪に怪しく揺れたら。
あたしじゃなくても警戒しちゃうよね?
頭は危険信号、だすよね?
「凛は、焦らされるのが好きなんだっけ」
「………………………っ」
好きなのは、たぶん翔琉さんだと思います。
あたし、好きじゃないよ?
散々やだ、って、泣いたよね?
ね?
ね?
「ねぇ、凛」
すでに泣き出しそうだよ、あたし。
さっきまで全然動かなかった体は、いつの間にか気付けば感覚も戻り、痺れもない。
だけどやっぱりまだ体を動かすには十分じゃないようで。
さすがに逃げる選択肢は、ないらしい。
確かに死ぬかと思った。
あの一瞬。
目の前が真っ暗になって、感覚がなくなって。
息が、苦しくなって。
冷たくて。
これが、血がなくなる、感覚なのかな、なんて。
そんなことを思っていた。
だけど気付けば翔琉に抱き締められて、いて。
さらに何故だか勝手に翔琉は変なスイッチ入っちゃってるし。
わけわかんなくていろんな意味で泣きそうなんだけど、あたし今。
なのに翔琉はさらに、真っ赤な瞳をさらに細めて、あたしを奈落へと突き落とすのだ。
「どこまで、耐えられる?」