第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
不安気に揺れる瞳の色が失われそうに、弱々しくなって。
触れる手先が、冷たくなっていく。
細胞が、壊れていく。
「ごめん、凛」
自分の手首へと牙を突き刺し、動脈まで突き破る。
流れ出る血液を、そのまま凛の口へと持っていけば。
彼女はそれを、ゴクンと一口、喉を鳴らす。
「………ごめん、壊れないで凛」
そのまま彼女は、手首へと吸い付いた。
「………」
開いた彼女の瞳はオレンジ色へと変化、していて。
凛自身の細胞が変化していることを、物語る。
左手で目元を覆い、凛の視界を奪ってから、手を離す。
再度開かれた凛の瞳は真っ黒で。
『戻った』事実に、安堵する。
「かける?」
「凛ちゃん」
いつもの、凛だ。
暖かい。
指先の温度も、ちゃんとある。
良かった。
『戻った』。
「翔琉」
「うん、凛ちゃん。もう少しだけ、付き合って?」
「ぇ」
『戻った』、けど。
ごめん。
血液の代わりになる同等の体液は、他にもあるよ。
これ以上は、血をあげられない。
細胞が壊れたら、戻せないから。
だから。
これしか方法が、ないんだ。
それに。
くらくらする、甘い匂い。
自分が今、どんな顔してるかなんて自覚、ないよねきっと。
こんな顔されてお預けとか、無理だわ。
ほんとはあんまり無理、させたくないんだけど。
凛の体力を戻す方法がこれしかないから。
「凛」
強引に耳もとに声を捩じ込めば。
ビクン、て小さく反応する体。
だから言ったんだよ。
こんな下着みたいな水着駄目だって。
ラッシュガードのファスナーを降ろせば。
『下着みたいな水着』なわけで。
邪魔なものなんかない凛の体は、少し触っただけですぐにドロドロに溶け始めた。
理性がまた飛びそう。
さっきあげた俺の血液は、うまく凛のそれと順応し始めたみたいだし。
凛の体が求めるものと、俺の求めるものが一緒、なら。
凛。
少し、虐めてもいい?