第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
「ねぇ、翔琉っ」
隣に腰下ろして、翔琉の右腕を揺さぶると。
ゆっくり顔をあげた翔琉の瞳は、真っ赤に染まってた。
「翔琉?」
「凛」
…………………ドクン
顔をあげた翔琉と視線が絡んだと思った途端に感じた、心音。
これは、あたしの?
それとも翔琉の、心臓?
ドクン ドクン ドクン
「凛」
妖しく細められた瞳が、笑ったように揺れた。
瞬間。
がりっ
って。
いつもとは比べ物にならないくらいに、深く食い込む鋭い牙。
「……………………………い、………ったい」
痛みも、いつもの『それ』とは、比にならないくらい。
痛みで涙が溢れた。
「翔琉」
呼んでも呼んでも、全然反応しない。
ただひたすらに血液を貪る翔琉に、一瞬覚えた、恐怖。
「翔琉っ」
どーしよう。
ドクン ドクン ドクン
翔琉じゃないみたいだ。
いつもどれだけ翔琉が我慢、して、加減してくれていたのかが良くわかる。
クラクラする。
血、のまれすぎたんだ。
指先が、痺れてきた。
どーしよう。
あたし、死んじゃうのかな。
違う。
そんなこと絶対に、ない。
翔琉はそんなこと絶対に、しない。
「………かけ、るっ」
「大丈夫だよ」
悲鳴とも取れるあたしの叫びに応えたのは、安心を覚えるいつもの、翔琉。
「大丈夫だよ、凜ちゃん、怖がらせてごめんね?」