第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
いくら呼んでみても、全然反応なんてなくて。
潮も満ちてきたし、そろそろ危険かも、なんて考えが頭をよぎった、その時。
『凛』
頭に響いた、確かな声。
「翔琉?」
振り返ってみても、聞こえるのはうるさいくらいの波の音。
潮が満ちれば、この岩場は完全に海に沈む。
すでに足元にまできている波のせいで、誰も遊んでいる人なんていない。
でも。
聞こえたもん、翔琉の声。
波の中に沈んだ砂浜をバシャバシャ進んで。
向こうの岩場までなんとか進んでいくと。
岩場に背中預けてうずくまってる翔琉の姿。
「翔琉っ」
なに?
どーしたの?
なんでこんなんなってんの?
呼吸も荒いし、苦しそう。
駆け寄った翔琉に触れると、火傷しそうなくらい、熱い。
「翔琉?」
これ。
『あの時』と、同じ?
『喉渇いた』
翔琉、そう言ってた。
『ヴァンパイアの飢えは、地獄だよ』
言ってた。
翔琉。