第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
『触るの禁止』
『咬むのも禁止』
俺にとっては死刑を宣告されたと同じような言葉を残し、最愛の彼女は走って行ってしまった。
「やりすぎたか」
凛を前にすると触れたくて触れたくて自制が効かなくなってしまう。
嫌がりながらもちゃんと受け止めてくれる凛がかわいくて。
ついつい、調子にのって遊んでしまうのだが。
今回はさすがにやりすぎたらしい。
「フラれたか」
ふぅー、と。
ため息を吐き出しながら座り込んで、ポリポリと頭を掻きながらひとりごちていれば。
「…………」
ばかにしたように笑って、パラソルへと入って来た人物に一気に歪む表情。
「だいたいなんでいんだよ、お前」
「翔琉がこんな危ないとこいるからだろ」
「こんな日射しくらいなんともない」
「そのわりに呼吸乱れてるみたいだけど」
「咲良」
低く呟き、徐に伏せた瞳を開けば。
「は?……っ、ぉも」
ガクン、と手足を下へと投げ出し頭を垂れる咲良。
「もっと重くする?」
「ふ、っざけんなガキっ」
「………」
言葉の使い方、覚えなよいい加減。
学習能力低いんじゃないの?
「まだ、粘る?」
「…………っ」
沈黙は、敗北と取ってあげるよ特別に。
血液を鉛へと変えるくらい、もっと重いものへと変えることだって簡単だ。
「………逆らえるわけねーし、そんな力」
「学習しなよ、咲良」
変えた血液をもとへと戻せば。
咲良は不機嫌そうにその場から立ち去って行った。
「いい加減ひとりの女に執着すんのやめろ、それともあの子がお仲間になんの待ってんのか?」
皮肉にしては答えに困る疑問を残して。
はっきり言って。
ひとりの女にこんなに執着したのは初めてだ。
いつも喉が渇けば適当に夜道をさ迷えば獲物は自然と向こうからやってくる。
だから、ひとりの女と長く付き合ったこともないし、女は『獲物』としか見てなかった。
だけど凛は違う。
初めてあった時に感じた甘い匂い。
どの女を喰っても、噛んでも、あんな匂いのする女はいなかった。
凛。
凛だけは絶対、俺が守る。