第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
「…………………凛」
「…………………え」
急に色香に揺れる瞳に見つめられて。
無意識に笑顔が消えた。
「喉、渇いた」
「…………………」
やっぱり。
やっぱり?
やっぱり!
ここで?
ここで欲情しますか、翔琉さん。
てか、今のやりとりのどこ?
どこに甘い雰囲気あった?
ないよね?
なかったよね、確かっ
「無理」
「凛ちゃん」
耳もとで囁いたって、無理。
ここがどこだかわかってる?
青い空、青い海!
の、ど真ん中!
そーゆーいけないことは、絶対にしちゃいけない場所のはず。
「凛ーっ」
ビーチバレー満喫中の未琴の声が遠くから聞こえて。
「そろそろ交代しよ…………」
なんて明るい声と一緒に顔を出した親友の表情は。
みるみる呆れたように崩れてくる。
「あ、未琴、あのね?」
弁解しようと起こした上体は、ラッシュガードは肩のあたりまで落ちてきていて、露出した首にも肩にも、見るからに明らかな、紅い跡。
腕だけで支えるあたしの体に跨がるのは、もちろん翔琉さんで。
「公衆の面前でそーゆーことすると捕まるよ?ワイセツ罪ってゆーんだって」
待って。
違うのっ
「未琴っ」
行かないで、未琴っ
「翔琉」
「ん?」
邪魔者いなくなってよかったね、なんて笑いながら更に押し倒す翔琉に。
「旅行中お触り禁止」
ぐぐぐっと。
両手で翔琉の顔を突っぱねてから、あたしの言葉に固まっている翔琉の腕から抜け出した。