第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
「凛さん、凛さん」
「はい?」
「夏、といえば?」
「夏、といえば、もちろん」
隣の未琴とにんまり微笑んで。
「「海だぁっっっ!!」」
どこまでも広がる青空のもと、思いきり大声で叫んだ。
大学の一室。
柳田先生の研究室、柳田班の面々で。
今日はなんと。
海までお出掛けですっっ
柳田班の先輩が、民宿の跡取りとかで。
希望者みんなで海に遊びがてら、民宿まで足を伸ばそうって話になったのです。
「海だ、海だ、海だぁっっ」
「海来ないと夏始まれないよねっ」
「未琴、早く行こうよ」
きゃぁって叫びだしながら海に向かって走りだそうとした、その時。
「凛ちゃん」
やっぱりというか、何故かというか。
うん、何故かかな。
柳田班でもないくせに何故かいる翔琉に、腕を掴まれた。
不満げに顔を見合わせて後ろを振り返れば。
「そんな下着みたいな格好みんなに見せびらかすつもり?」
なんて不機嫌極まりない表情でラッシュガードをわざわざ着せてくれちゃう翔琉と。
「三崎さんも」
ご丁寧に未琴にまでラッシュガードを渡してくれちゃうのは。
こちらも何故か、の、通称『咲ちゃん先生』。
形ばかりの引率らしい。
「はい、凛ちゃんこれちゃんと着て」
「………なんで翔琉までいんの、昨日なんにも言わなかったじゃない」
「凛ちゃんだって未琴さんと行くって俺に言わなかったよ?」
「同じゼミだもん。一緒なの当たり前じゃん」
「凛ちゃんが行くなら俺も行くんだよ。当たり前のことわざわざ言う必要ないでしょ?」
「…………」
理屈が通じない相手との会話ほど、頭が疲れるものはないと思うわ。