第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
「今度は俺が膝枕してあげる。おいで」
ぐい、と凛の頭を引き寄せ頭を彼女がさっきしたように撫でてやれば。
「寝ちゃうよ?」
「いいよ、凛の寝顔かわいいから」
「……意地でも寝ない」
「天の邪鬼」
「うるさいな」
凛の髪、サラサラしていてほんと気持ちいい。
ずっとずっと、撫でていたい。
「さっきさ」
「ん?」
「さっき、凛の夢見てた」
「あたしの?」
「うん」
『運命なんて、信じる?』
『信じないわ』
『即答だね』
『運命なんて、たまたま選んだ選択肢の結果でしかないもの。そんなもののために人生なんて預けられないわ』
「なに、思いだし笑い?」
出逢った頃の会話、思い出すだけでこぼれ落ちるのは、無意識にも自然と綻んだ口元と表情。
「ねぇ凛、『運命なんて、信じる?』」
「………」
テレビの、決して大きくはない画面に写し出された映画から視線をゆっくりとこちらへと向け、暫し考えるように沈黙してから。
彼女は口を開いた。
「信じない」
「なんで?」
「あたしの記憶から翔琉が消えても、同じようにこうしていることが出来たなら、信じる」
「たまたま選んだ選択肢の結果なのに?」
「選んだ結果が2度、同じならきっとそれは必然なんだと思うから」
「運命じゃなくて?」
「決められた道を進むのは嫌い」
「凛ちゃんらしい」
むすー、と不機嫌に頬を膨らませる彼女のほっぺたに贈った口付け。
「誉めたんだよ?」
「誤魔化されないもん」
「かわいいなぁ、凛ちゃん」
誰にも触れさせないで。
俺だけが、許される特権だから。
「咬むの、や」
「わかってるよ、明日早いもんね」
首筋へと近付けた唇は、咬むだけじゃないよ。
「………ッッ」
こうして、キレイな男避けの跡を付けることだって、できるんだから。
「………最悪」
「なに、その顔。襲うよ?」
そんなかわいい顔で煽られたら自制できる自信ないなぁ。
「自制して、頼むから」
甘い匂いこんなに濃厚にしといてそれは、いささか拷問だよね。