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Deep Blood ーラブヴァンプー

第2章 花の蜜に吸い寄せられるのは、蝶だけではない


『当番』。
ゼミの中で定期的に回ってくるそれは、特に何をするでもないのだが、予定があったりすれば必然的にその当番が、請け負うことになる。
例えば忘新年会や歓迎会の幹事、こういった雑用の類など。


「うっそ、何これ」
「年代順に並べるみたいだね」
「だってバラッバラですよ?」
「だから、整理なんじゃない?」

「……」


ごもっともです、ええ。



これぞまさしくザ、雑用的なね。


はぁ。
仕方ない。
やるか。



「周王さんて、理学の二宮と付き合ってるってほんと?」
「ええまぁ、みたいですね」
「みたいって、ずいぶん他人事だね」
「他人事ですよ。だってそれ、先輩には全然関係ないことですから」
「………」
「どんな噂かはだいたい想像つきますけど、多分それ、全部噂通りです」



とりあえず、年代の記載がないものは抜き出して。
あるものを並べていけばいっかな。
意外とまずまず年代順には並べてありそうだし。
さすがに2限まで落とすわけにもいかないしなぁ。




「………ッッっうっ」



何?
カミソリ?


古びた大学の卒業名簿、ってやつの整理は。
だいたい夏辺りに毎年行われる。
卒業間近になると同窓会名簿だなんだと、学生が毎年バラッバラにしていくせいで。
そんな分厚い卒業名簿を、年代別に取り出していく最中。
鋭い痛みを感じた右手は、重たい名簿の質量には耐えきれず。そのままバサバサバサッと重たい音を響かせながら、名簿は床へと転がった。


「……」


落ちていく瞬間見えた、光るもの。
あれは間違いなく、カミソリ。



「周王さんっ??大丈夫っ?」



そんなものがまさか本に挟んであるなんて予想すらしないし。
重たい名簿を抜き取るわけだからそれなりに負荷もかける。
おかげで、ぐっさりぱっくり、それなりにおびただしい血液が床へと伝った。


「………あー、たぶん」

こんなことで血、無駄使いしてる場合じゃないってのに。
勿体ない。
ペロリと自分の血液を舐めとり、喉を鳴らす。

「何してんの?」
「こーすれば血、無駄遣いしなくてすむかなぁ、と」

「……面白いことするね」





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