第2章 花の蜜に吸い寄せられるのは、蝶だけではない
「凛さん、凛さん」
「何よ?」
「あんたの旦那、咲ちんと知り合い?」
「?」
「ほれ」
講義室へと向かう2階の渡り廊下。
から、先ほど別れたばっかの翔琉が講師の梁瀬となにやら会話しているのが見える。
「話くらいすんじゃないの講師と学生だし」
「咲ちん理学じゃないのに接点あったっけ」
「いちいち知らないよ、翔琉の交遊関係なんて」
「あのふたり、雰囲気似てるよね」
見事なスルーっぷりだし。
自分の伝えたいことだけを的確に伝えるあたり、さすがだわ。
「どの辺が?」
「………チャラいところとか?」
「………」
少しだけあいた間は、あたしに遠慮して言葉を選んだ結果なんだよね?
のわりには人の彼氏捕まえてけっこうな言われようだけど。
この際、目を瞑ってあげるわ。
「凛」
「今度は何よ」
「遅刻」
「………」
そりゃそうだよね。
けっこうなギリギリで家を出たんだから。
こんなところでふらふらと遊んでる暇なんて、そーいえばなかったんだった。
「……ラウンジでも行こうか」
「単位大丈夫かなぁ」
「なんとかなるんじゃない?いざとなればあんたの旦那にでもレポート手伝ってもらうとか」
「チャラいから手伝ってくんないかも」
「根に持つ女は嫌われんだよ、凛さん」
「………」
彼女、三崎 未琴(みさき みこと)とは。
この大学来てからの友人。
このとおりたいぶクール?な性格だから、付き合うのがすごく楽。
同じ学部でゼミまで一緒だから。
取っている時間割りも割りとかぶってたりするわけだ。
「周王さん」
「?」
ラウンジへと向かう中庭で。
不意に声をかけてきたのは同じゼミの確か、先輩。
「今週当番だったよね?資料室の整理頼まれてない?」
「え、初耳っぽい」
「今空き?俺もだから、やっちゃおっか」
げぇ、まじ?
チラリと隣に向けた視線。
「いってら」
は、そんな言葉と共に手を振る友人に見事に玉砕した。
「ケチー」
「2限間に合うといいねー」