• テキストサイズ

Deep Blood ーラブヴァンプー

第2章 花の蜜に吸い寄せられるのは、蝶だけではない







「………甘ったるい匂い」



凛を友人へと引き渡し、その後ろ姿を目で追っていれば。
不意に聞こえたのはそんなドスのきいた低い声。



「咲良(さくら)」


いつの間にか後ろに立っていた、古くからの友人、と呼べるかも疑問な男。
同じ血をもつ、仲間だ。


「ありゃ食べて下さいと言わんばかりの匂いだな。うまそうだ」
「心配ない。凛には俺の血が流れてる。わざわざ俺のものに手を出す物好きもいないだろう?」
「ある意味拷問だな、お気の毒」
「何しに来た?」
「お前の体調を伺いにな。顔色悪いぞ、血、足りてないんだろ?」
「このくらいなんともない」
「適当に貰えば。いいの紹介してやろーか?なかなかの上等な血だぜ?」
「凛以外にはいらない」
「………エサだろう?人間なんて。自分の身を削ってまで情をかけすぎだ」
「凛はエサなんかじゃない、それ以上口を開くならこの場でお前の肉ごと引きちぎる」
「こーわっ」
「用がないなら失せろ」


「はいはい、『ルキウスの血』に逆らうようなことはしませんよ」


「………」


「翔琉」


横を通り過ぎ、俺に背を向けたまま。
咲は言葉を続ける。


「いつまであの子に血を入れとくつもりだ?お前の血は濃すぎる。このままじゃあの子まで仲間になっちまうぜ?」
「わかってる」
「そろそろ少しづつでも、返してもらいな」

「……」


「次に吸血衝動にかられたら、終わりだぞ」

「………」



わかってる。
そんなこと、言われなくても。
だけどこのままじゃ凛は。
凛の細胞はまだ、修復されていない。
もう少し。
もう少しだけ。



_____凛。





/ 79ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp