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三十路教師と女子高生。

第2章 4月。担任とアイツと初対面と。





無事に入学式も終わり、教室に戻った俺は必要事項を伝え、生徒たちを解散させた。

ざわざわと帰宅しようとしている生徒たちの波を抜け、俺は声をかけた。

「橘立夏」

びくりと肩を跳ねさせた橘。
年季の入ったリュックサックを背負った彼女は上目遣いで俺を見る。

「あー、急に悪い。あのな…今日保護者の方来てるか?」

その問いに橘は首を横に降る。

「おばあちゃん、風邪ひいちゃって…今日は来ていません。」
「そうか…じゃあ、個別で個人面談がしたいから…今度自宅にお邪魔してもいいか?」

高校生くらいになると、家庭訪問をやっている学校は少ないだろう。
うちの学校も保護者に来てもらうことの方が多い。
しかし、体調の悪いばあちゃんに来てもらうほど俺は鬼畜じゃあない。

「わかり、ました。おばあちゃんに聞いておきます。」

下向きな目線。
リュックサックの肩紐をぎゅっと握りしめた彼女は小さな声で、先生さようならと呟くとぺこりとお辞儀をして教室を出て行った。

誰もいなくなった教室で、俺はため息を吐く。
ああ、タバコ吸いてえなぁ…

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