第3章 4月、木曜放課後、家庭訪問。
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昔ながらの小さな平屋。
インターフォンの代わりにガラス戸を2回叩き声をかければ、少しの間の後にからからと戸が開いた。
「先生。」
「今日はごめんな。あ、っと…」
「おばあちゃんは中にいるのでどうぞ。」
お邪魔します、と声をかけ中に入る。
靴を脱ぎ、少し高い上がり框を振り返ると脱いだ靴を揃える。
1番手前の部屋の前で待っている橘の横を通り過ぎ部屋に入れば、昔ながらのちゃぶ台とブラウン管時代の名残のあるテレビ台と薄くて小さいテレビがあった。
ちゃぶ台には、俺の方を向くしゃんとした背中のご老人。
「失礼します。」
小さく一礼をして、ご老人の反対側の座布団に座れば、目の前のご老人が深々と頭を下げた。
「立夏がお世話になっております。立夏の祖母でございます。」
「え、と、4月から橘さんの担任になりました。山岡正嗣と申します。急な家庭訪問に応じていただきありがとうございます。」
橘の祖母が下げた頭をあげるタイミングを見計らいこちらも顔をあげると、橘が祖母に声をかけて部屋から退室した。
「あの、お聞きしたいことが」
「あの子の両親のことですよね?」
優しげな笑みを浮かべた目の前のご老人。
俺はコクリと頷くと、その顔がすうと引き締まった。