第1章 ●瞳に映らなくとも*伊月俊
「俺、咲良のことが好きだよ。出会った時から、ずっと。」
「…え?…今、何て、」
「好きなんだ、咲良のことが。だから、咲良に触れられて柄にもなく上がっちゃったんだ。…ごめん、ずっと隠してて。」
相当驚いたのか、咲良の口は少し開かれたままだった。
そして、そのまま静かに涙を流した。
「ごめん…、やっぱり嫌だったよな。今の忘れてくれ…。」
俺は少し溜息を吐きながら咲良から手を離す。
その途端、咲良は焦ったようにその手を俺に伸ばし、ふるふると顔を左右に振る。
「そうじゃないの!その、驚いて、…嬉しくて、嬉し過ぎて、思わず泣いちゃったというか…。」
「咲良…、それって…。」
伸ばされた手をもう一度掴む。
すると、安心したように微笑んで咲良はこう言った。
「私もずっと前から伊月君のことが好きでした。」
それを聞いた瞬間、思わず身体が動いて咲良を抱き締める。
咲良の両腕も俺の背中に回され、咲良が顔を俺の右肩に乗せてきた。