第1章 ●瞳に映らなくとも*伊月俊
「伊月君、凄く綺麗なお顔だね…。」
「そうか?咲良に言われると恥ずかしいな。」
目の周りをクルクルと撫でられ、少しくすぐったい。
それに合わせて目を閉じていると、咲良の手が動きを止める。
不思議に思って目を開けると心配そうに眉毛を下げている咲良がいた。
「どうした?」
「いや、伊月君、凄く顔が熱いから熱でもあるんじゃないかと思って…。大丈夫?辛くない?」
純粋に心配してくれてる咲良を見ると、咲良に触れられて喜んでる自分がとても嫌な奴に思えてきた。
ここは言い訳をしてその場を逃れた方が得策か…、多分咲良は俺が適当な嘘を吐いても信じてくれるだろう。
でも、もうそんなまどろっこしいことしてちゃダメだと思った。
「なぁ、咲良。俺別に熱なんて無いし、体調も悪くないよ。」
「そっか、なら良かった。私の勘違いかな。」
「いや、勘違いじゃないよ。」
「…伊月君?」
俺に触れていた両手を握り締める。
そして光を映さない咲良の目を見て言った。