第6章 夢にも思わない*宮地清志
「女神、俺は女神の気持ちを最大限に尊重したいが、そんなに心の広い男でもない。誰なんだ、その、好きな人って奴は。」
俺がそう尋ねると、女神は不思議そうに目を丸めた。
「宮地君、だよ?」
「だから、今は俺の話じゃなくて、女神の好きな人の話をだな…、」
「だから、宮地君なんだってば、私の好きな人は。」
女神の好きな人が、俺…?
俺は女神が好きで、女神も俺が好き。
ん?一体どういうことだ?
さっぱり意味が分からない。
仕方ないから大坪達に助けを求めると、良かったじゃねぇか…、と半分涙目になりながら俺を見ている。
「宮地君、大丈夫?意識はある?」
女神が俺の前で手を振っている。
そして、その手を俺の頬に添えて俺の瞳をじっと見つめている。
「俺と女神が両想い…?」
「そう、そういうこと。やっと分かってくれた?」
「両想い、両想い………、って、両想いぃぃ!!?」
ようやく女神の言葉の意味を理解する。
すると同時に女神の顔がぼんやりと見えてきた。
鼻からなんだか暖かい液体が垂れている感覚もする。
宮地君!しっかりして!
なんて女神の一生懸命な声が聞こえてくる気もするが、どうやら俺はここまでらしい。
あぁ、神様。一時の素晴らしい夢を見せてくれてありがとう。
それから天に昇るようなふわふわした感覚で俺は意識を手放した。
結局鼻血を出しながら倒れた俺が目覚めたのは放課後で、ベッドの横について待っていてくれた女神を見て再び鼻血を出したのは言うまでもない。