第1章 ●瞳に映らなくとも*伊月俊
「嫌なわけないだろ。俺も、咲良に俺のこともっと知って欲しい。」
そう言って咲良の手を自分の頬へと導く。
すると、咲良の顔がみるみるうちに赤く染まる。
…ヤバイ。俺、大分大胆なことしてないか?
それでも俺に対して少しは安心感を覚えてくれているのかと思うと、自分のことをもっと知って欲しいという気持ちに変わりはなかった。
咲良は両手の指先を俺の頬に当て、徐々に顔のパーツへ指を滑らせていく。鼻筋をなぞったり、唇を撫でたり。
まるで恋人同士がするようなスキンシップに俺の心臓は尋常じゃないくらい音を立てていた。
咲良に聞こえたりしてないかな…?
少し不安になりながらも、好きな人に触れてもらえる喜びを感じていた。