第5章 いつかその花を手に入れる*黛千尋
「先生、今日の服、よく似合ってる。」
白衣の下には薄いピンク色のカットソーに茶色のパンツ。
派手さはないが、優しい先生らしいシンプルな格好だ。
まさに俺の理想通りだ。
「ほんと?ありがとう、黛君は優しいね。」
「俺が優しいのは先生に対してだけだ。」
それは光栄だなぁ、と言いながらふにゃりと笑う。
妙に間延びした語尾もリラックスできて俺は好きだ。
いつも通りのんびりとした空気の中、お弁当を食べ進める。
先生は何か気になるものがあるのか、お弁当の中身をじっと見つめている。
もしかして卵焼きか…?
俺は二つあるうちの一つを箸で掴み、先生の口元へと運ぶ。
すると、先生は驚いた様子で目を見開く。
「ごめん、私見過ぎたかな。私に気を遣わないで食べてね。」
元々困り気味の眉毛をもっと下げ、俺の手を押し返す。
だが、俺も負けじとその手を押し返し、先生の口元にピタリと卵焼きをくっつける。