第3章 怪我の原因*氷室辰也
「…ごめんなさい、しつこく問い詰めるような真似して。大我もごめんね、黙ってるの辛かったでしょ?」
いや、俺は別に…、とようやく笑顔を見せてくれた大我。
辰也は私の頬を伝っている涙を指で拭いながら話し出す。
「下衆の言うことなんて、咲良の耳には入れたくなくてね。
…結果として咲良を泣かせてしまった。
男として情けないよ…。ごめんね、咲良。」
「ううん、そんなの全然いいの。辰也が無事なら。」
辰也の指が頬を撫でる。
そして、そのまま頬を包まれたかと思うと
…ちゅっ、と小さく音を立てて唇にキスされた。
「ちょっ、なっ、いきなり何するの…!」
びっくりして思わず体を離すも、すぐに腕を掴まれそのまま引き寄せられる。
訳の分からないまま辰也の温かい腕に包まれ、体温が三度ほど急上昇した気がする。
「ねぇ、咲良。」
「は、はい…!」
戸惑いすぎて何故か敬語で話す私。
そんな私の耳元に唇を寄せて辰也は囁いた。
「咲良のことが好きだよ。
俺の彼女になってくれないか…?」
耳元に熱い息がかかり、背筋がふるりと震える。
それでも、私が密かに抱いていた気持ちが通じ合ったのが嬉しくて、私もそっと辰也の背中に腕を回す。