第3章 怪我の原因*氷室辰也
自分で思っていたよりも辰也の言葉にショックを受けたみたいで、じわじわと涙が湧き上がってくる。
それは自然と溢れ出して、拭っても拭っても止まらない。
「あ、あれ?おかしいな、なんか、止まらないや。」
無理やり笑顔を浮かべてそう言うと余計に涙が溢れてくる。
鼻を啜れば、ズズズっと可愛らしくない音が鳴る。
そんな私を見てバツの悪そうな顔をする辰也と大我。
すると大我が、もう耐えられないといった様子で、あのな…!と話し始める。
止めろ、大我、と辰也は止めているけど、大我は話すことを止めない。
「全部咲良のためなんだ…!」
「…へっ?」
大我の言葉に何とも情けない声が漏れる。
辰也はというと片手で頭を抱えながら溜息を吐いている。
「辰也のクラスメイト達が咲良のこと噂してて、それで、そいつらが咲良のことやらしい目で見てたから、だから辰也は…!」
「もういいよ、大我。それ以上は言うな。」
「……ごめん。」
そういうことだ、って言って辰也は困ったように笑う。
大我も、辰也のことは責めないでやってくれ、と一生懸命私にお願いしている。
つまり、なんだ。
全部、私のためにやってくれたことなのか。
…そういうことならさっさと言ってくれれば良かったのに。