第3章 怪我の原因*氷室辰也
「ねぇ、辰也。今日はどうして喧嘩したの?」
「…あぁ、少し頭に来たから、一発殴ってやろうと思っただけさ。」
「だから、その理由を聞いてるの。」
辰也は、ははっ、そうだな、なんて言葉を濁しながら一向に答える様子はない。
その代わりといったように、私の頭や頬を執拗に撫でてくる。
なんだか今日の辰也は変だ。
「ねぇ、理由は?」
「さあね。そんなこと、もう忘れちゃったよ。」
「あのねぇ…。」
一向に埒のあかない会話を続けていると、今度は大我の様子がおかしい。
どうしたの?と尋ねれば、…俺、知ってる、と小さく呟いた。
「知ってるなら教えて…、」
「ダメだ、咲良が知る必要はない。」
あまりにも強く言うので、大我も私も思わず黙り込んでしまう。
知る必要はない、って…。
それはあんまりじゃないか。
辰也が喧嘩して傷を作ってくる度に手当てしてるのに、ずっと三人で一緒にいるのに。
私だけに教えないなんて、
……私ってそんなに信用されてないのかな。