第2章 「おい お前、俺を拾え」
実家の親が聞いたら怒るだろう。
素性も知らない男を部屋に上げたなど。
だが男は本当に行き倒れていたようで、
一階のさやかの部屋まで
たどり着くのもやっとという有様だった。
『大丈夫ー?転ばないでよー』
さやかも横から支えた。
この男見た目よりもはるかに重い、
筋肉質なのだろうか。
ひとまず居間に使っている部屋に
男を転がし混む。
取り敢えず何か食べさせなくては、
と思うものの、さやかは
自炊をろくにしないタイプだった。
今すぐ、と言われて出てくるのは、
買い置きのカップラーメンが
数個という体たらくである。
『ごめんねー、私自炊苦手だから
これくらいしかないんだけど.....』
三分経ったカップラーメンを出すと、
男は黙って蓋を開けて食べ始めた。
「たまには悪くない」
微妙に引っかかる物言いだったが、
何しろ行き倒れの言うことなので
大目に見ることにする。
『お風呂も入る?』
「すまねえな」
俯きながら眉間にシワを寄せながら言う
『じゃ、それ食べてて。
私先に入っちゃうから』
今にして思うとこれも.....
何と言う無防備な所業だったろう。
得体の知れない男を部屋に上げ、
貴重品もそのままに
風呂場でとはいえ裸になるなんて!!
もっとも拾った〝犬〟は結局本当に
「俺は咬みはしねぇ、躾はなっている」
だったので、ことなきを得たのだが。