第2章 「おい お前、俺を拾え」
『あのぉ』
さやかは言葉に迷いながら、
結局こう尋ねた。
『どうしたんですか?』
男は眠たげに眉間にシワを寄せながら
瞬きをし答えた
「行き倒れてる」
『どうしてこんなところで?』
「腹が減ってこれ以上動けない」
『お金は?』
「手持ちの現金使い果たして無一文だ」
『へー......かわいそう』
男が警戒心を感じさせなかったせいだろう。
いつのまにか男の前にしゃがみ込んでいた。
と、男がポンとさやかの膝に
丸めた手を載せた。
そして、
「おい お前、俺を拾え」
そう言った。
.....それが人にものを頼む態度か!!!!
とも思ったがそれよりも
まるで犬のお手みたいだった。
このシチュエーションがツボに入った。
『ひ......拾って、って。
捨て犬みたいに...そ...そんな...あんた』
クククと笑い転げていると、
男はさらに言葉を重ねた。
「俺は咬みはしねぇ、躾はなっている」
『やだっ....やめてー!!!』
ますます笑いが止まらなくなった。
今にして思うと、この瞬間をして
魔が差したというのだろう。