第8章 「フキノトウ/フキ そしてツクシ」
「嫌になったか?散歩」
不意に衝いてそんな様子を見せるから、
きゅうっと胸が締まる。
『そんなことないよ。
フキノトウの天ぷらが鬼のように
苦かったことも含めて楽しかった。
今日のごはんって、
お米と調味料以外は一円も
お金かかってないんだよね。
それも面白いし......
結構街中に住んでるつもりだったのに
そんなこと可能なんだなぁって』
だから、と笑って首を傾げる。
『来週も天気良かったら
またどっか連れてって』
「......また何か見つけとく」
密かにホッとしているとこが見えて、
そんなところもかわいかった。
量を食べるものではないので
その日残ったツクシの佃煮とばっけ味噌、
翌日の日曜から登板となった
フキノトウの茎の味噌漬けは、
それからしばらく食卓を楽しませてくれた。
さやかが初めての混ぜごはんを
作って半分残っていたフキの小口切りは、
日曜日の夕飯でリヴァイが薄味の
炊き込みごはんにして出してきた。
さすがにさやかとは一味違う、
手の込んだ味である。