第8章 「フキノトウ/フキ そしてツクシ」
『......白いごはん欲しい。
ばっけ味噌ってこれ?』
「ああ、ばっけていうのは
東北の呼び方で、要するに
フキ味噌のことみたいだが。」
リヴァイが煮詰まった
味噌を中瓶に移した。
そして思いも寄らないことを言い出す。
「さやかにも一品作ってもらうぞ、
人の料理に横でギャーギャー
文句つけた罰だ。」
さやかは一気に青ざめた。
『だっ......ダメダメダメ、私が料理
全然できないの知ってるじゃない、
しかもこんな馴染みのない材料で!』
泡を食ったさやかの様子が
よほどおかしかったのか、
リヴァイは小さく笑い出した。
「嘘に決まってんだろ、
簡単だからやってみろって話だ」
言いつつリヴァイがさやかに
持たせたのはボウルとしゃもじである。
「使う道具はこれだけだ。
これ適当にボウルの中に入れろ」
指し示されたのは、最初にフキを
始末したときに小口切りになって
タッパーに収まっていた分である。
『ど、どれくらい?』
「軽く一掴みだな」
だとするとちょうど
タッパーの半分くらいだ。
恐る恐る小口切りになった
フキを摑み、ボウルの中に入れる。
次に塩の入れ物を
無言で目の前に開けられる。
これもリヴァイの指示のまま、
付属のサジに軽く半分ほどを振る。
「塩とフキ適当に混ぜろ」
金のボウルとプラスチックの
しゃもじが かちゃかちゃ音を立てる。
「適当にメシ突っ込め」
リヴァイが炊飯器を開けると
もう仕掛けた米が炊き上がっていた。
『適当にって......』
「二合炊いたから三分の二くらいだな」
言われるままの量を入れてまた混ぜる。
「フキが全体に混ざるようにざっくりな。
混ざったらもうそれで終わりだ。」
『え、これで?』
「ああ、フキの混ぜごはんだ。
味は保証するぞ。食ってみろ」
言われて恐る恐るごはんを
一つまみ口に放り込んでみる。