第8章 「フキノトウ/フキ そしてツクシ」
『......おいしい......かも』
フキのほろ苦さと
軽い塩だけの単純な、
しかし単純なだけに
飽きの来ない味だった。
「かも、は余計だがな。うまいな。」
初めてさやかが作ったので、
自信を持たせようと
しているのかもしれない。
でも一緒につまんだリヴァイが
断言してくれたのは嬉しかった。
自分の採ってきたものが料理に
なっていくのが面白かったので、
ずっとリヴァイのそばに張り付いていた。
採りすぎたツクシは佃煮になった。
湯がいてアクを抜き、炒めて
甘辛に煮付けたものが小鉢に移る。
味見をさせてもらったが
〝おばあちゃんの味〟
という感じの素朴さだ。
『あれ、ツクシ全部使わなかったの?』
「残りは後で天ぷらにするぞ。
フキノトウ二つ揚げるだけで
天ぷら鍋出すのもアレだしな。」
そしてリヴァイは
豆腐とワカメの味噌汁を作り、
天ぷら油が熱くなるのを待つ間に
フキノトウの一つを生のままで
半分ほどみじん切りした。
フキの強い香りが辺りに漂う。
「さやか、天ぷらの衣作れ」
『えっ?!』
小麦粉に卵に氷水に、と考えて
パニックになったさやかに、
リヴァイがさらりと言った。
「コツの要らねえ例のアレだからな。
引き出しの中に入ってんぞ」
『......リヴァイでもああいうの使うんだ』
「便利なものを使わないでどうする。
時間ないときでもできるし、
誰がやったって失敗しないしな。」
〝誰がやったって〟という所に
微妙な引っかかりを感じつつ、
衣を説明書書きの通りに用意する。
そしてとうとう
天ぷらを揚げる段になった。