第8章 「フキノトウ/フキ そしてツクシ」
『つーかーれーたー』
それまで地道に続けていた
作業を中断して、さやかは
居間のテーブルに突っ伏した。
「チッ.....
だから言っただろ。手間だと。」
『目に来る、目に。
うわー爪の間も真っ黒』
帰宅して二人で続けている作業は
ツクシのはかま取りである。
それを一つ一つ取る必要が
あるとは知らなかった。
力の要る作業ではないが、
何しろ数が多いいのが苦だ。
「爪の間のはアクだ。調子乗って
取りすぎるからだろうが。」
横からリヴァイがからかう。
それもその通りで、
生まれて初めてツクシを見たさやかは
舞い上がって小さなザルに軽く
山盛りになるほどの量を摘んでいた。
「まあ分からなくもないがな。
採るとき手が止まらなくなるのはな」
『うん、何か脳内麻薬出てた』
結局ツクシのはかまは
半分以上リヴァイが
取ってくれたのではないかと思う。
「次はフキだぞ」
リヴァイが台所に立ち、
テフロンの片手中華鍋に湯を沸かす。
一人暮らしを始めるときに鍋類も
張り切って揃えたものの、
どれも何度か使ったきりで
リヴァイが来るまで死蔵されていた。
『どうするの?』
「茹でこぼしてアク抜いて
全部スジ取りだな」
『ひーっ!』
「問題ない、ツクシよりか
面倒じゃねえからな。
上から下まで一気に剥けるしな。
それにこの鍋一回で茹で終わるくらいしか
採ってきてないからな。」
リヴァイが葉を捨ててきた
フキを洗い桶の中でざぶざぶ洗う。
この段階に来るとさやかも
茹でこぼしたものを水に取り、
少し冷ました状態にしてから
二人でスジ取りにかかった。
作業を始めてすぐ気づく。