第7章 「春が遅い年は悪くない」
ほどほどに手が入り、
ほどほどにほったらかされている。
少なくともピシッと
整備されすぎて面白味のない
川辺ではなかった。
『日陰とかまだ雪が残ってるんだね』
「最近までしぶとく降ってたからな
だから今がちょうどなんだが」
〝だから今がちょうど〟と
リヴァイは謎の呟きをした。
『ちょうどって何が?』
「まあ、それは着いてからだ」
そう言ってリヴァイは
自転車を押して
下り口を下りはじめた。
『景色だけだと
もう春なんて信じられない』
河原にはまだ春らしい色彩は
ほとんど見当たらない。
ようやく芝生が
緑になってきたか、程度だ。
「春が遅い年は悪くない....
ゆっくり春を楽しめるからな」
そんなことを言うリヴァイは
春の楽しみ方とやらを
知っているのだろうか。
家を出たときは
少し肌寒いかなと思ったが、
確かにリヴァイの言う通り
ここまで歩いてくると
体は温まってきた。
もう少し歩いたらパーカーの
前を開けたくなるだろう。
ジョギングしている人や
サッカーしている人が結構いるが、
子供や若者だけでなくかなりの
年配者も混じっていることに驚く。