第3章 「二人の楽しい計画」
それから二人で部屋を出た。
商店街ではなく駅の向こうの
郊外型スーパーまで歩いて、
一万円の自転車を買った。
リヴァイの服も揃えた。
黒いボトム三本とインナーを
あれこれ取り合わせて四、五枚。
下着と靴下もそれなりに。
春に向けてアウターも一着。
『リヴァイの服しまう場所が要るね』
さやかの使っている
チェストとクローゼットは
衣替えのたびにさやかの衣類を
飲み込むだけが精一杯だ。
『ハンガーラックでも買おうか』
「いや、場所ふさぎの上に金もかかる」
リヴァイは初期費用が
積み重なっていくことに
気が引けていた。
「部屋に釘は打てるのか?」
『あ、それは打ち放題。
何せ築二十年だしね』
「ならホームセンターに行くぞ、
近くにあるのか?」
そして買った物をカゴに詰め込んで、
荷台の初めての荷物はさやかになった。
やや後ろめたく荷台に横座りになり、
恐る恐るリヴァイの腰に腕を回す。
腕を回した手に当たる
リヴァイの体は想像以上に固く、
男らしい体つきだった。
「おい、もっとちゃんと捕まれ
死なれたら困るからな」
『自転車ごときで死んでられないよ』
大げさだな。と鼻で笑いながら
リヴァイの腰に回した腕の力を強くした。
リヴァイが漕ぎだした自転車特有の
のんびりしたスピードは久しぶりで、
流れていく景色が
不思議と新鮮に映った。
そしてリヴァイが
ホームセンターで買ったのは、
木ねじで取り付けるハンガーラックだ。
ドライバーと合わせて三千円しない。
「邪魔にならねえとこに付けていいか?
それでその下にこれを置く」
もう一つリヴァイが選んだのは
蓋付きのバスケットだ。
こちらも特価三千円。
合計五千円少々。
『考えたねえ...』
「クソみてえに
初期費用かけてらんねえからな」
帰り道は荷台にバスケットが載り、
さやかはそれを支えながら
歩くことになった。
二人乗りできなかったのが
少しだけ残念だった。