第2章 「おい お前、俺を拾え」
「......待遇は?」
『住環境と生活費の管理権』
「住環境の中に布団はあるのか?」
『客用布団があるから使って』
「ほう...悪くない...良いだろう」
言いつつ彼は
畳んでいた寝袋を広げた。
「寝袋干していいか?
しばらく使わないときは
風に当てておきたいんだが。」
『許可取らなくていい。
あるものは勝手に使って、
もうあなたの部屋でもあるから.....』
つっけんどんな言葉の
裏に忍ばせた照れ隠しは
隠しきれていなかったらしい。
彼は少しだけ口角を
上げ軒先(のきさき)に出た。
「ほう.....小さいが庭があるんだな。」
一階なので防犯目的で
フェンスが張り巡らされた庭である。
フェンスが抜いてあるのは
隣室に面したところだけ、
非常時の脱出経路としては
各戸の軒下(のきした)に
ベランダ隔板(かくはん)が建っている。
『何か檻にでも
入れられてるみたいよね。
すぐ雑草だらけになるし』
「これくらいの高さなら布団を干せる」
『あなたみたいにマメじゃない....』
そしてまだ彼の名前を
知らなかったことに気がついた。